燕沢の家・外観設計

意匠系(一応)建築設計をしている身として見た目はとても重要視しています。

外観を考えることは、内部を考えることでもある。

ここは景色がいい、木が見えるから窓がいい。

太陽の光を室内に入れて、暖かくしたい。

春秋は通風で気持ちよくしたい。

ただ内側だけで窓配置を考えると外観はチグハグになります。

外観は屋根・壁・窓、この3つの要素で作られていると言っていいですが、窓が最も難しいです。

窓の配置はとても重要です。

さて、本題としたい現在進行中、燕沢の家を見てみましょう。

窓について気をつけたことは主に4つ。

揃える・集める・散らす・付け過ぎない。

角地のため、南と西は特に気をつけました。

南はみんな大好き、太陽光が入る大事な方角。

4つのガラスのサイズを揃えて、集めて、大きく付けました。

写真では1階にも陽が当たってますが、向かいが更地のためです。

いずれ建物が建ったら日差しは期待出来ません。

なので1階には窓を設けず、壁を大きく残しました。

西面は様々なタイプの窓が混在。

北西の造作FIXは1、2階の幅を合わせ、縁取り、中間を黒にすることで大きな1つの窓のように見せています。

ロフトの高窓は換気のため。

高窓でも拭き掃除が出来るよう、ツーアクション窓を選択しました。

1階唯一の掃き出し窓は、引き違い窓を転用して片引きに。

ガラス枠の外には、防犯や日射制御のための格子戸が付きます。

様々役割を持たせてますが、中から見ても景色の良い場所に設けてます。

外観としてはほど良く散らしてます。

2階南西は壁は大きく残せました。

大工さんに丁寧に作っていただいた木の外壁が際立ちます。

ただ、家といえば?と聞かれたら、なんかイメージと違う気もしてきます。

どんなに原則が守られていても、本当に良いのか?

合理的に考えすぎて不細工なのでは?と設計中に不安になることはあります。

なのでどの案件でも、他の設計事務所の仕事などを見て確認し、方針を決定していきます。

最小限住宅(9坪)・増沢洵
スミレアオイハウス(9坪)・小泉誠

燕沢の家は狭小家ゆえ、9坪ハウスを参考にしました。

増沢洵さんの住宅は早くも似てます。

余談ですが、スミレアオイハウスは一棟貸しのゲストハウスとして運営中、9坪の広さが分かるので是非!

fca・堀部安嗣

9坪ハウスは正面の田の字窓が象徴的且つカッコ可愛いので、1階を閉じてもいいのか?と思った時に参考になった建築家の仕事。

壁の残り方がカッコよく、問題ないと判断。

また、スミレアオイハウスは凹凸感が少ないキューブだから愛らしい。

軒を出しては、まとまりが欠くのではとも思ったがそれも問題なさそう。

上記で確認し安心しつつ、外国の住宅や山小屋を参考にしました。

木の外壁でもフラットな仕上がりだったり、窓枠は黒だったり、木製窓だったり。

だきと言われる窓の奥行きがあったり。

外国の建物はカッコ良くて本当に参考になります。

でもそれだけではダメで、日本風土に合うことは守らなければなりません。

そのための参考事例でした。

それをしても大丈夫、と安心出来れば良いだけ。

どんな建物でも、最後は愛着だと思います。

その愛着の大事な要素が外観だと思います。

そしてそれが町並みとなる。

良い家が増えれば町が整う。

そんな、分不相応な大それた事を思いながら設計しています。

スタッフあべ

オーダーデスク

東京に住む姪っ子のためにデスクを作って欲しいと依頼があり制作。

ロフトベッドがあり、下のスペースで使用したい。

サイズ指定だけあり、その他意匠・デザインは一任されました。

シェーカーデザインです。

素材はナラ無垢材・オイル仕上げ。

ツマミは旋盤で制作。

金物は真鍮フック・デッドストック品。

コンパクトに仕上がったデスクは、いわゆる勉強机だけではなく、様々な生活シーンに寄り添ってくれます。

狭いワンルームでも、リビングの脇でも。

誠実な素材を、確かな作りで仕上げるだけ。

そのためにシェーカーデザインを選択しました。

また、引き出しはA4用紙がファイルで入るようになど、現代の生活スケールに合うよう設計しています。

せっかくのオーダー品ですから、末長く使い続けられるよう、デザインも機能性も耐久性も、丈夫で健康なものを作っていきたいです。

スタッフあべ

建築の旅・金山町火葬場

家族葬ホールの設計の依頼があり、近しい施設の名作として、初めて山形県金山町にある火葬場を訪れた。

イグネのような木々の中にある小さな火葬場。

建築家・益子義弘の設計です。

長い車寄せがあり重厚な扉が迎えてくれる。

少し暗い廊下と並木を思わせる列柱があり、印象的な照明計画。

その先に火葬と骨上げを行う広場があり、両側が大きな窓で緑を取り込む。

宗教観のない設計を行なったとのこと。

宗教に関わらず、最後は自然に帰るという暗示であると受け取った。

それが故、仏教的要素は感じず、チャペルのようでもあり、どこか神聖な雰囲気を感じとる。

森に向かってベンチが置かれていた。

森を介して故人と対話するような、

待っている間、お別れの時、悲しくもあり、でも時間は止まることなく流れていく。

おそらく、家族とも離れて静か向き合いたい時間もあるだろう。

そう言った不安を、木々を見て少しでも癒されればという想いも感じる。

悲しさに寄り添う建築であり、

生を全うしたことに賛美を送るような、崇高な気持ちの建築であるように思った。

建築人として、ここを訪れたものは皆ここで焼かれたいと思う、素晴らしい建築でした。

スタッフあべ

連坊のプライベートヘアサロン

昨年施工させていただいた小さなヘアサロンです。

レンガは本来なら床などに使用するが、ベンチの仕上げとして家具で製作。

見慣れた素材でも使い方次第で新鮮に感じます。

レセプションカウンターやベンチの丸テーブルはFRPでシームレスな見た目に。

背面の棚は大容量の収納はもちろんのこと、雑多に見えるスイッチ類の格納や排水管の隠蔽、さらにトイレの出入り口としました。

決して広くない店内にトイレの存在感を薄れさせたかったから。

照明は調光照明をメインに、ヴィンテージや名作をセレクト。

ここのテーマは『塊感』でした。

素材に木やレンガ、天然リノリウムのような普遍的で素朴な素材を使用する一方で、FRPのような近代的な素材、家具のプロポーションやミニマルな納まり、小物でまとめる。

温かみを持たせながら、サロン故に都会的な雰囲気を纏わせることができたと思います。

ロゴデザインは友人でありデザイナーとして活躍する小松大知によるもの。

初めてのコラボレーションも嬉しい出来事でした。

美容室末永

スタッフあべ

2024年 仕事始め

5日より仕事始め。

執筆者あべは辰年の年男なので比較的に気合いが入るスタートです。

年始に能登半島で大地震がありました。

東日本大震災を経験した身からすれば、今現在、不安で不便で毎日怖く苦しい気持ちでいる皆様に、早く平穏な日常が戻ればと願うばかりです。

毎日続く平凡な日常が、こんなに大切で愛おしいことであると思い知らされます。

珠洲市に移住した友人がいるのですが、帰省し石川を離れていたので、無事が確認出来たのが幸いでした。

弊社はオーダー家具屋で、内装屋で、建築設計事務所として活動しています。

意匠デザインは大前提として、やはりこれからは断熱気密はもちろん、耐震性が大事で耐震等級3を標準としたい。

永く住み続けられる家づくり。

ただ、上物である建築をどんなに丈夫に作ろうと、結局はその土地や地盤、地域によって倒壊の危険があることは理解しなければいけません。

土地選びがより一層大切です。

私が新卒で建築事務所に勤めた2011年4月1日。

1番初めにしたのは被災現場の視察でした。

設計者として、この気持ちを忘れてはいけない。

スタッフあべ

エアコンって知ってる?

エアコン、皆さん知ってますよね。

エアーコンディショナーです。

アパートであっても当たり前のように付いていますが、深いところまで知っている人は少ない。

当の私もエアコンの本当の実力を理解したのはここ数年のことです。

本当に詳しい人は他に沢山いるので、触り程度に簡潔に書きます。

すごいところまず1つ目

暖房、冷房、除湿が1つの機械で出来ること

これはよくよく考えるとすごいこと。

夏にも梅雨にも冬にも対応できる万能機です。

すごいところ2つ目

燃費が良い。

ってこと知っている人は意外といない。

石油ストーブなどが1の燃料から1の熱を作るのに対し、エアコンは1の燃料(電気)から7くらいの熱が作れます。

もちろん使い方や環境によりますが少なくとも3くらいにはなります。

3つ目

冒頭で言った3役使えて低燃費な高性能機械なのに安い!

日本のエアコンはとにかく安い。

壁掛けエアコンなら簡単に買い替えも出来ます。

でもエアコンだけじゃ寒くて、石油ストーブの併用してますって人も多いですよね?

それは断熱と気密がないから。

日本の家は基本的に寒い。

充分に断熱と気密がなされていればエアコンだけでポカポカです。

逆説的になりますが、エアコンと太陽だけで暖かく涼しく暮らせる家づくりを前提に設計をしています。

断熱気密と太陽に素直な設計。

エアコンに対してネガティブなイメージを払拭できればと思います。

スタッフあべ

木製サッシのススメ

サッシと言えばどんなものを思い浮かべますか?

たぶん多数の方がアルミ製サッシを思い浮かべると思います。

木製サッシ知ってる?と聞かれれば、おばあちゃんちのガラスがカタカタと鳴るものを思いますか?

サッシは現在、アルミ製、アルミ樹脂複合、樹脂製が主流で、木製や鉄製のような少数派が有ります。

それぞれに見た目や性能といった特性の違いがあって、建物に対する考え方や適材適所で選びます。

その中でも住宅では複合サッシか、樹脂サッシが多くを占めています。

ガラスとの組み合わせもありますが、基本的には断熱性能に優れた樹脂サッシ、見た目に優れた複合サッシとなんとなく大別されています。

そんななか何故木製サッシをすすめるかと言いますと、それらには真似出来ないほどの圧倒的な大開口を作ることが出来るからです。

サッシ枠は戸袋に引き込まれ、この案件は高さ2m×幅3mの大開口になりました。

隣の引き違いサッシは一般的な幅が約1.6mほど。

その大きさの違いが分かると思います。

私の好みとして、外との繋がりを強調し、外に出られるプラン考えます。

そんな時ここぞという所に木製サッシを付けたい。

もちろん課題はあって、既製品ではなく一品物で大型なので高額になります。

コストの配分が肝であり、最低限の家の性能が下回らないことを条件として採用を検討します。

ただやはり満足度はとても高いもの。

大開口なだけでなく、見た目がよく温かみがあり断熱性能も高いです。

「豊かな物は外からやってくる」と言われます。

窓は建築にとても大事なキーとなる要素です。

余裕があれば検討するのはいかがでしょうか?

スタッフあべ

燕沢の家・上棟式・餅まき

上棟式、そして餅まきをしました。

最近ではなかなかやらなくなった式典。

近所付き合いが希薄となる昨今、家とは、住宅とは、町とはと考える中、こういった人付き合いを大切にしたい。

計画地は古い住宅地の一画。

お年寄りが多く、工事の挨拶も兼ねて。

懐かしく思ってくれるのでは無いかと。

家を建設することは、近所の方々に半年程度騒音や振動などご迷惑をおかけしたりする。

全く申し訳ないとこだと思います。

それでも隣近所の方々に楽しみにしていると言って頂けて嬉しく心助かる。

お陰様で近所の方々、友人知人に沢山集まって頂き楽しく執り行う事ができました。

弊社はこの度式典用に法被を誂えました。

伝統や行事を大事に。

そして楽しくなるように!

背中には木のマーク。

それはある著名なデザイナー、M川Aきら氏に会う機会があり、サラサラっとスケッチして考えてくれたもの。

裏話、経緯を話したくてしょうがない方がいるので聞いてあげて下さい笑

ちなみに上棟式、いくらお金がかかるの?

なんて思いますよね。

上棟式の内容によりますが、今回の費用は約4万円でした。

『内訳』

⚫︎すみ餅とまき餅 1.5万円

⚫︎大工さんへのお礼 2万円

⚫︎餅と共にまいたお菓子とお金 5千円

集まる人数や神主を呼ぶかなどで様々変わると思います。

それでもそのような費用をかけても「やって良かったな」という終わりでした。

新築をお考えの方、やるやらないは自由ですが、やって後悔は無いと思います。

おすすめします!

スタッフあべ

建築の旅・いとう家の住宅

プロダクトデザイナーであり建築家としても活躍する小泉誠さんの設計した住宅を見学しました。

内部は撮影不可だったのでSNSなどから引用させてもらってます。

軒が欲しいとの要望から部分的に下屋を作り、2方向に勾配を付けている。

先に雨樋は無く勾配添いに伝っていく水が集まり、外構で作った浸透枡に落ちる仕組み。

軒先は極限まで薄くするため厚物合板で強度を取り、通気穴のパンチングは○✖️で花のように可愛らしく、小泉さんらしい。

でも合板木口の積層は出しちゃうのね、なんて考えたり。

窓際の腰掛け濡れ縁は壁からの金物で浮いてます、さすがです。

小泉さんお得意のJパネルのジグザグ階段。

隅々まで処理が綺麗、普段はダボで処理するところも今回はほぼ見受けられない。気づいてないだけか?

ぱっと見強度に不安を覚える手すり、裏でビス8点留めしてしっかりとしたものでした。

造作のキッチン。

人工大理石を正面から上面に折って、窓台と手元灯のために連ねる使い方が斬新。

リオタデザインの関本さんが、「小泉さんは線ではなく面で作っている」と言っていたのが思い出される。

引き出し・開き戸と引き手の関係がかなり巧妙で、ノイズレスにコーディネートされている。

キッチンは見た目はもちろん使い勝手を追求するところなのでいつも参考に注目しています。

階段上がった2階の家族共用のスペース。

ペンダントライトがオリジナルで可愛らしい。

ワークデスクにはライン照明を組み込んでいる。

足物は配線のための空間を設けており、甲板との線のやり取りやタップによるコンセントの増設、またルーターも入る仕掛け。

そのため前板は簡単に外れます。

床付近の丸穴が指掛けです。

窓の下枠の作り方も個性的。

下に折り返して、あたかも角材がめり込んでいるような意匠。

空間でも白の空間に木の塊があるとか、塊に塊がめり込むようなことをよくやってるそれなのか?

収納豊富な主寝室。

棚の扉は壁とゾロにし、面を揃えている。

棚は縦4ブロックあるが右の1ブロックは扉を付けクローズにすることで、面の繋がりを強調してるように思う。

故に綺麗で整っている印象。

小泉さんは良くやるが、中段の飾り棚は扉勝ちで天板は負かす。

それだけで塊感が増す。

巾木・大輪や支輪は基本無し。

扉は当たり前だが、棚も天井との取り合いで少し透かして逃げている。

何でもかんでも、透かすのがいいとか、ぶつけるのがいいとか、そういうわけではなさそう。

色は大体白・黒・木でコーディネートするが、日焼けするのを小泉さんは嫌うのか?木部はうっすら、木目を殺さないように白に塗装。

写真はないですが、タイルの納めやカーテンについても綺麗な納まりが満載でした。

今はもう相羽建設さんのYouTubeチャンネルである程度見ることは出来ますが、本当にすごくてびっくりして、改めて空間に身を置く、見る、体験する大切さを感じました。

スタッフ阿部

照明士・花井さんによる勉強会

少し前のブログで照明計画の重要性や難しさを書きました。

そんなことを日々思いつつ、大光電機の花井架津彦さんによる勉強会があったので参加させていただいた。

以前設計した案件の図面を元に、照明士である花井さんならどんな計画を提案するのか教えてもらった。

やはり提案としては照明の灯数を出来るだけ厳選し、沢山つけないことだった。

また間接照明による直射では無い柔らかな光を活用する。

そしてミラータイプのグレアレスダウンライトの使用と集中配灯だった。

建築家・吉村順三の「欲しいのは光であって器具では無い」という格言があるが、間接照明を計画すればまさにそれが表現できる。

ただ、今までその考えに違和感が全くなかったわけでは無い。

間接照明をカッコよく活用し過ぎるのは、どちらかというと少し野暮で田舎っぽい提案をする自分の設計に合っているのか悩むところであった。

店舗感や都会感が、家の安堵感を減らすのでは無いか?と危惧していた。

また器具派とでも言えばよいのか、プロダクトの良さを主張する提案も好きなのでそれがまた難しいところ。

ただ、大光電機のショールームで体感すると確かに心地良さがあるし、目にチラつくようなキツさが無い。

照明灯数を減らすのにも寄与する。

ミラータイプのグレアレスダウンライトも上記と同じで、スタイリッシュ過ぎないかと思う節があった。

そのダウンライトの特性は、夜間の窓への映り込みが少なかったり、点灯していてもそれを感じにくいところ。

つまりは器具の存在感が減る。

調光器の利用も計画に盛り込み、シーンにあった調整が可能にするなど。

この勉強会に参加したおかげで、以前より照明に注目すること、感じることが増えました。

また今まで全然気に留めなかったタイプの器具にも注目するようになった。

どこにいっても照明は身近にある。

良い照明計画、ストレスを感じる照明はどんなときか?など感度高めて行きたいです。

これまでの提案は変わらず好き。

さらに引き出しが増やせたらと思います。

花井さんを知るきっかけとなった、建築系YouTuberげげさんによる対談動画です。

みなさんに見てほしい対談です。

https://m.youtube.com/watch?v=Zv0OYfgbCsM&t=389s

スタッフあべ