建築の旅・ヴィラクゥクゥ

設計・吉阪隆正、竣工は1957年。

修復設計は新素材研究所で、現オーナーは俳優の鈴木京香さん。

修復を終え見学可能になったと知り、友人に声を掛け見に行った。

しかし設計者の吉阪隆正のことはあまり良く知らない。

近代建築の巨匠の1人、コルビュジェに師事していたのでもちろん興味はあった。

その前は考現学の今和次郎に師事していたことを知り、さらに関心が強くなった。

実際に目の当たりにするとなんとミニマルなスケール。

鉄筋コンクリート造のためもっと大きいのかと思っていたのだが、硬さを感じない柔らかな印象。

窓周りにレリーフを施すなど、細工に拘っていると思いきや、施工不良のジャンカという現象を逆に利用して、象徴的に見せている。

カーサブルータスに出てた構図?笑

1、2階ともに天井高が抑えられてるのが伺える。

奥の書斎。

天井高は1900くらいだったか?

私は裸足のまま手を上げるとおおよそ2150ミリ。

なので普段はその身体寸法を利用して天井高を測っているのだが、低過ぎて逆に分からなかった。

しかし吹抜けと籠り感ある巧な空間構成に居心地の良さを覚えた。

壁際のソファと細長い窓、棚や照明の配置の妙。

ダウンライトは2個が斜めに隣り合う。

天井は直線的なただの勾配天井ではなく少しラウンドしている。

その丸みとこの配置が大事なのではと思った。

ソファダイニング隣のキッチン。

キッチンは竣工当時を完全再現するのではなく、現代の生活に合うように改変。

最低限の更新で元の雰囲気を可能な限り尊重する。

水栓や棚下のLED照明は現代物のはずだが、不思議とマッチしている。

スイッチ類も多少リフォームされているが、表からは目立たない位置に配置。

世界観を守るための憎い配慮です。

その他沢山の面白いディテール。

でも再現性は低めかと。

住宅より商店の方が相性が良いかもと思う。

予習のため読んだカーサブルータスに「ヴェニス憲章」についてあり、

『修復する際は当時の工法、素材を尊重しながら行い、どの時代の改変にも正当性がある』

条文が完全にあっているわけでは無いがそのような旨が記載されていた。

その懐の深さに感銘を受けてしまった。

大事なのはオリジナルというのは簡単だ。

故にどの時代の改変やその過程にまで正当性を与えるなんて考えもしなかった。

その考えの基礎にはどんなものでも文化財になり得る可能性を知っているからなのか。

全体の家具は鈴木京香が選んだものを配置しているよう。

そのセンスとリテラシーの高さにも感動。

可能な限り元を活用しつつ、時代や人間関係の繋がりでセレクトしていることが伺える。

貴重な機会が得られ、お礼のファンレターでも書きたくなりました。

建築フリーク友人たちと行けて、本当に楽しい見学となりました。

スタッフあべ